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重文の蒔絵机は珠姫の嫁入り道具

重文の蒔絵机を調べる小池教授(左から2人目)=妙成寺

 妙成寺所蔵の国重要文化財の蒔絵机(まきえづくえ)が、加賀藩3代藩主前田利常の正室・珠姫(天徳院)の嫁入り道具であった可能性があることが、文化庁文化財部調査員を務める小池富雄鶴見大教授らの調査で分かりました。同調査には、妙成寺文化財調査委員会美術班長の北春千代石川県歴史博物館学芸主幹が同行しました。

 蒔絵机は、将軍家の御用蒔絵師であった幸阿弥(こうあみ)家が手掛けた現存最古の婚礼調度とみられ、松に巣ごもる5羽のひな鶴と亀、タチバナなどを配した図柄で、多産、長寿の願いがこめられています。小池教授の調査で、「濃梨子地松橘(なしじまつたちばな)之御絵様」「慶長十三年」(1608年)と記された幸阿弥家文書の記述と一致していました。

 珠姫は徳川幕府2代将軍秀忠の娘で、1601(慶長6)年に利常のもとに輿入れし、その11年後に結婚したとされています。これまで蒔絵机は珠姫の長女・亀鶴姫の遺愛品と伝えられてきましたが、実は母のもので、親子2代にわたって使われたとみられます。

 近世初期の蒔絵机では、3代将軍家光の長女・千代姫が1639(寛永16)年に尾張徳川家に嫁いだ際の婚礼調度類の一群で、国宝となっている「初音(はつね)の調度」(名古屋市の徳川美術館蔵)が知られています。徳川美術館に勤務した小池教授の指摘によると、妙成寺の蒔絵机はこれより年代が古いことになります。